ふたりの窓の外
今回の読書は、深沢仁さんの著書「ふたりの窓の外」です。
伊丹にある本屋「ブックランドフレンズ」のこんぶ店長と話していたら、これ読んでみたら…と薦められました。
物語は、火葬場という非日常で出会ったふたり(鳴宮と藤間)が、急遽ふたり旅をすることとなり、その後、春・夏・秋・冬と出会い(旅)を重ねるたびに、少しずつ関係を築いていく純愛小説です。
「こんなことあるかなぁ」と思わせる展開ではありますが、物語全体が、こんなにも静かで優しいのは、ふたりが最初から互いに”誠実”だったからだと思います。
冬の章では、お互いの気持ちを正直に伝え合う場面に、ふたりがどれだけ相手を思ってきたかがにじみ出ていたのでは…
個人的には、鳴宮が「長いバージョンで」と言って、あえて言葉を尽くそうとする場面には、相手のことを本当に大切に思っているからこそ、簡単に済ませたくないという”誠実”さが滲んでいたように感じます。
時に、思いを言葉にすることは、相手に負担をかけてしまうかもしれない。
それでも、「伝えたい」と思う気持ちがあるなら、端折らずに差し出す勇気が必要で…
それは、相手を信じているからこそできることだし、言葉にすることでしか届かないものもあるように感じました。
また、春夏秋冬の季節の描写が素敵ですね~。
料理に例えると、まるでスパイスのよう…
ふたりの出来事に寄り添うように控えめで、でも確かに物語に深みを与えていて…
季節の風景がそっと寄り添いながら、ふたりの関係が変化していくところが絶妙でした。
誰かに想いを伝えるって、たぶん少し勇気がいること。
言いすぎても、言わなすぎても、不安になることはあるけれど…
それでも、大切な人との時間を、丁寧に過ごしたいと思える気持ちは、きっと、何よりもやさしくて誠実だと思いました。
#伊丹にあるブックランドフレンズのこんぶ店長の選書本
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