やめるときも、すこやかなるときも


今回の読書は、窪美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』です。


家具職人の壱晴と、パンフレット制作会社で働く桜子…

ふたりの視点から描かれる、静かで深く、そして繊細な純愛小説です。


壱晴は、過去の喪失体験により、毎年12月になると声が出なくなる「記念日反応」という症状を抱えて生きてきました。桜子もまた、家庭の事情から恋愛に距離を置き、自分自身をどこか抑えて過ごしてきた女性です。そんなふたりが偶然出会い、それぞれの過去と向き合いながら、少しずつ心を通わせていきます。


物語の終盤、壱晴の師匠である哲先生の言葉が、深く心に残りました。

亡くなる直前、壱晴に向けて告げられる「桜子さんから離れるな。工房に戻れ、壱晴」「作れよ」という言葉。

そこには、職人として一歩踏み出すこと、そして愛する人への迷いなき想いを込めるように椅子を作ることを伝える、師匠の深い愛情を感じました。

まさに壱晴が職人としての覚悟と、桜子への想いをひとつにした瞬間でした。


この作品のタイトルである「やめるときも、すこやかなるときも」は、結婚式の誓いの言葉から取られています。しかし、ここで描かれるのは理想よりも現実。


誰もが完璧ではないからこそ、葛藤しながら、支え合いながら生きていく。素の自分をさらけ出すことに不安を覚えつつも、それでも歩み寄ろうとするふたりの姿に、胸がぎゅっとなりました。


この本に出会い、前回読んだ作品同様、またひとつ家族という存在に想いを馳せることになりました。


不完全だからこそ愛おしい…そんな感覚を、丁寧に届けてくれる一冊です。



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